大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ラ)34号 決定

真正に成立したと認められる甲第二、三号証、証人竹本嘉子、毎沢孝之、加藤新八郎の各証言をあわせると、東京地方裁判所所属の執行吏代理である加藤新八郎が昭和三十一年十一月二十一日本件判決正本を、同判決に被告訴訟代理人として表示せられた弁護士大沢一六にたいする送達として東京都文京区元町一丁目九番地光文堂書院へ持参したこと、加藤執行吏代理がみぎ送達の手続をとつた事情は、はじめて大沢一六弁護士に送達すべき訴訟書類が執行吏役場から同執行吏代理に廻付されたとき、同弁護士の住所を調べると担当区域外の豊島区であつたので、執行吏役場の係に返したところ、係から文京区元町の光文書院へ送達するよう知らせがあつたのでそれから一、二回同書院に持参し、竹本嘉子あるいは毎沢孝之によつて受領せられたことがあつたため、本件判決正本も同書院に持参したものにすぎず、同執行代理はこれら送達にさいしみぎ光文書院が大沢一六弁護士の正当な書類受領場所であることを確かめた上でしたものではないことを認めることができる。

抗告人は民法第百十二条を援用して本件送達の効力が大沢弁護士のため生じたことを主張するけれども民事訴訟法第百七十一条において送達をなすべき場所において送達を受くべき者に出会わないときは、事務員、雇人又は同居者にして事理を弁識するに足るべき知能を具うる者に書類を交付することを定めた理由は、これらの者において送達書類の交付を受けたときは、送達宛名人本人に書類を交付しその他本人においてその内容を了知しうべき状態にあるものと認めたためであるから、その関係が消滅するときは、これらの者に送達書類を交付して送達をすることができないこと自ら明かである。この間民法第百十二条を準用する余地がないこと多くいうをまたない。

(牧野 谷口 満田)

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